Suno/Udio で作った曲の音が小さい?——原因は「マスタリング」、Mac での解決法 3 つ

Suno や Udio で気に入った曲ができた。ところが、市販の楽曲の直後に再生してみると——自分の曲だけ音が小さく、細く、どこか「未完成」に聞こえる。曲が悪いわけではありません。音楽制作の最後の工程である「マスタリング」を通っていないだけです。


この記事では、AI 生成曲の音が小さく聞こえる理由、ストリーミング時代の「音圧」の考え方、そして Mac でできる実践的な解決法を紹介します。

足りないのは「マスタリング」という工程

AI 音楽生成サービスは、作曲・演奏・ミックスまでを一度に生成します。ダウンロードしたファイルは「ミックス(2mix)」に近いもので、リリース品質の「マスター」ではありません。

マスタリングとは、ミックスをリリース前に仕上げる最終工程です。具体的には、全体の音量感(音圧)を商業作品と並べても遜色ないレベルへ引き上げる、エンコード後に歪まないようピークを制御する、再生環境が変わっても破綻しないよう音色バランスを整える——といった処理を指します。市販曲はすべてこの工程を通っています。AI 生成曲の書き出しファイルは通っていないことが多い。並べて聴いたときの差は、ここから生まれます。

音圧・LUFS・トゥルーピークを 2 分で理解する

人間の感じる音量(ラウドネス)は LUFS という単位で測ります(ITU BS.1770 準拠)。リリースする人が知っておくべき事実は 2 つです。

1 つ目。主要ストリーミングサービスは再生時にラウドネスを揃えます。たとえば Spotify は対応デバイスでの再生を −14 LUFS に正規化し、Premium ユーザーは「大」(−11)/「標準」(−14)/「小」(−19)を選べます(Spotify 公式ドキュメント)。

2 つ目。Spotify 自身のマスタリング推奨値は「インテグレーテッド −14 LUFS、トゥルーピーク −1 dBTP 以下(−14 LUFS より大きい音圧にする場合は −2 dBTP 以下)」です(同上)。ロスあり圧縮での歪みを避けるためです。

「正規化されるなら、マスタリング不要では?」

もっともな疑問ですが、答えは 3 つあります。

まず、正規化はどこでも効くわけではありません。Spotify でも Web プレーヤーや一部のサードパーティ機器では正規化が適用されません(Spotify サポート)。ファイルを直接共有したとき、動画に載せたとき、DJ プレイで使われたときも同様で、小さいマスターはそのまま小さく再生されます。

次に、正規化が揃えるのは平均ラウドネスだけです。暴れたピーク、こもった・刺さる音色バランス、セクション間の不揃いは直りません。プラットフォームに「音量を上げてもらった」だけの音源は、きちんとリミッティングされた音源と比べると密度感で聴き劣りします。

最後に、小さすぎるマスターが無制限に持ち上げられるわけでもありません。Spotify は小さい音源に正のゲインをかける際もロスあり圧縮保護のためのヘッドルームを残す仕様です(同上)。

Mac でできる 3 つの解決法

方法 1: DAW で自分でマスタリングする。 Logic Pro や Ableton Live、GarageBand +リミッターでも可能です。最も自由度が高い一方、LUFS/トゥルーピークのメータリング、リミッター、EQ の知識が必要で、習得には相応の時間がかかります。音作りが好きな人には楽しい道です。

方法 2: クラウド型 AI マスタリングサービス。 ブラウザから音源をアップロードすると、マスタリング済みファイルが返ってくるタイプです。知識不要で品質も実用的ですが、音源を外部サーバーへアップロードすること、回線と処理待ちに依存すること、料金が月額制または従量制であることがトレードオフです。

方法 3: Mac 上で完結するローカル型アプリ。 ドラッグ&ドロップの手軽さはそのままに、処理はすべて手元の Mac で行うタイプ。アップロード不要でオフラインでも動き、待ち行列もありません。

Tonekai の紹介(私たちのアプリです)

私たちは方法 3 にあたる macOS 用 AI マスタリングアプリ「Tonekai」を開発しています。ここは開発元として具体的に書ける部分です。

使い方はファイルをドロップするだけ。楽曲を解析し、音圧・バランス・ピークを自動調整します。書き出し前に元音源とマスタリング後を A/B 試聴で聴き比べられます。処理は Apple Silicon 上で完全ローカルに行われ、音源が Mac の外に出ることはありません。無料で試せて、買い切りの Pro Unlock(サブスク不要)で WAV/AAC 書き出しと無制限マスタリングが解放されます。対応環境は macOS 14 以降です。

プロのマスタリングエンジニアの代わりになるとは言いません(自動処理でそれができるものはありません)。ただ、AI 生成曲を「書き出したまま」から「リリースできる音圧と質感」へ 1 分以内で持っていく道具としては、自分たちの曲のために欲しかったものをそのまま作りました。

Mac App Store で Tonekai をダウンロード(無料で試せます)

Suno の曲での実践手順

  1. できるだけ高音質でダウンロードする。 Suno の WAV ダウンロードは Pro / Premier プラン限定で、無料プランは MP3 です(Suno 公式ヘルプ)。マスタリング素材としては WAV が望ましいですが、MP3 でも実用になります。
  2. マスタリングする。 DAW・クラウドサービス・ローカルアプリのいずれでも(Tonekai ならファイルをドロップして数秒待ち、A/B 試聴で確認)。
  3. 市販のリファレンス曲と聴き比べる。 音量を揃えて比較するのがコツです。
  4. 書き出してリリース。 ストリーミング向けなら「−14 LUFS 前後・トゥルーピーク −1 dBTP 以下」という Spotify 自身の推奨に沿うのが無難です。

よくある質問

マスタリングで生成ノイズ(アーティファクト)は消える? 消えません。マスタリングは「あるもの」を磨く工程で、生成段階で混入したグリッチや不明瞭なボーカルは除去できません。素材に問題がある場合は再生成してからマスタリングを。

MP3 素材でも大丈夫? 実用にはなりますが、非可逆圧縮を二重にかけることになるため、配信を見据えるなら WAV 入力 → WAV 出力が安全です。

プラットフォームごとに別マスターが必要? 個人リリースの範囲では、一般的なストリーミング水準に整えた 1 本のマスターで十分なことがほとんどです。

まとめ

Suno の曲の音が小さいのは、AI 音楽だからではなく、マスタリングを通っていないからです。DAW を学ぶ、クラウドサービスを使う、Mac 上のローカルアプリで済ませる——どの方法でも、この一工程を足すことが、AI 音楽クリエイターにとって最も効果の大きい品質改善になります。